原始美術の簡単まとめ|オーニャック期とマドレーヌ期の遺例とは?
原始美術とは?
原始美術(primitive art)とは主に
ほかに、青銅器・鉄器時代のさまざまな美術を指します。
旧石器時代の美術
旧石器時代の美術とは、約3万年前の旧石器時代後期から始まります。
ここで簡単に、人類の起源を振り返ってみましょう。
その歴史は
- 猿人(400~250年前)
- 原人(240万年前)
- 旧人(60万年前)
- 新人(20万年前)
の4つの分類のもとで一般的に、語られます。
猿人を代表するアウストラロピテクスの時代、我々は直立二足歩行と打製石器を使用していました。
原人の時代になると、例えば北京原人は、火の使用を行うようになったといわれています。
旧人(ネアンデルタール人)の時代になると、墓地に花を飾り、死者を弔う習慣があったというのも有名な話ですね。
さて、旧石器時代の美術がはじまるとされるのは、新人の時代です。
新人は
- 現在の人類と体の形や脳の容積がほぼ同じ
といわれています。
この代表が、ヨーロッパのクロマニョン人です。
新人の時代になると我々は、フランスのラスコーやスペインのアルタミラなどの洞窟の壁に、実生活において機能を持つとはいえない「美術作品」として、リアルな動物の絵を描くようになりました。
以下、詳しく作品を見ていきましょう。
オーリニャック期(約3万年~2万5千年前)
この時代の洞窟絵画は、南フランスから北スペインにかけて発見されました。
- クニャック洞窟(フランス)
- ラス・チメネアス洞窟(スペイン)
が、代表的です。
クニャック洞窟の壁画は、以下のようなものです。
人類最初の絵画作品は、赤い輪郭線で描かれたヤギの絵だったんですね。
ちなみにクニャック洞窟(フランス)は、現地ツアーを利用して観光することもできるようです。
以下の動画を見ると、洞窟内の様子がよくわかります。
南フランスに訪れる機会があれば、足を運んでみたいと感じました。
(観光詳細や参考写真はGrottes de Cougnacへ行く前に! - トリップアドバイザー)
ラス・チメネアス洞窟(スペイン)は以下のような洞窟絵画です。
黒の簡潔な輪郭線で描かれている、鹿の絵が特徴的ですね。
こちらはカンタブリア州の観光サイト(Cueva de Las Chimeneas - Turismo de Cantabria)から、アクセス情報をみることができます。
下の動画を見ると、よりイメージがわきやすいと思います。
ちなみに、この時代の動産美術(壁画と違い、持ち運ぶことができる小美術の意)として最も有名なのは
- ブラッサンプイ出土の女性頭部像
です。
象牙彫りで、高さは4センチに満たない小品になります。
とても小さな作品ではありますが、目鼻や頭髪の造形は、克明で写実的ですね。
(この作品は、フランスのパリ西20km先に位置する国立考古学博物館に所蔵されています)
ほかにも
- スティアトパイグス型(steatopygous)
と呼ばれる豊かな乳房をもつ女性石偶も多く発見されています。
なかでも、有名な作品が
- ヴィルレンドルフのヴィーナス(Venus of Willendorf)
です。
高さは約11cmほどで、現在はウィーン自然史博物館にて蒐集されています。
(詳細な解説は、縄文のビーナス ヴィレンドルフ Willendorf immodest Venus )
まとめると、これらオーリニャック期美術の特徴は
- 単純な輪郭線による写実性(壁画)
- 生殖機能を強調した造形力(彫刻)
となります。
ソリュトレ期(約2万5千年~2万年前)
次のソリュトレ期では
- 洞窟絵画はいまだに発見されていない
ですが、フリノー・デュ・ディアブル出土の牛の岩陰浮彫は、たくましく豊かな肉付きを的確に表しているそうです。
マドレーヌ期(約2万年前~1万年前)
洞窟絵画の頂点に達するのが、マドレーヌ期です。
初期は、オーリニャック期と同じく輪郭線が中心で、単純な表現が多いです。
しかし中期以降になると
- 動物の体毛の色の使い分け
- 明暗の使い分け
- 肥痩を輪郭線によって描き分け
といった表現力の豊かさが確認されます。
マドレーヌ期後期の代表作としては
- ラスコー洞窟
- アルタミラ洞窟
が有名です。
単一の線で描かれていたオーリニャック期の洞窟絵画とは異なり、体の部位によって毛の太さに工夫がみられ、より写実的な表現を確認することができます。
現在、ラスコー洞窟は立ち入り禁止ですが、約200メートルほど離れた場所に、同規模の複製洞窟(ラスコーⅡ)があります。
(入場券はモンティニャックの町にある観光局で販売しており、1回40分ほどのツアーで鑑賞できるとのことです。詳細はLascaux IIへ行く前に!見どころをチェック )
アルタミラ洞窟壁画は、以下のようなものです。
動画を見ると、よりイメージがわくと思います。
ラスコーとアルタミラの洞窟壁画には、特に大きな画風の違いはないようです。
アルタミラ洞窟は現在非公開ですが、アルタミラ洞窟博物館という場所でレプリカを鑑賞することができるようです。
場所はスペインの北にあるサンティリャーナ・デル・マルの外れになります。
(詳細はアルタミラ洞窟(のレプリカ) - Museo de Altamiraの口コミ )
中石器時代
西洋の中石器美術は
- 東スペイン(レバント美術)
- 北欧(極北美術)
に代表されます。
いずれの美術の中石器時代の重要な遺例ではあるものの、ラスコーやアルタミラのような表現の豊かさは確認できていません。
同様に新石器時代の美術に関しても、時代を特徴づける造形活動を見出すことはできていません。